白いノート

this and that

『パッキパキ北京』カジュアル感想文

小説家・綿矢りささんの新刊『パッキパキ北京』を読んでみました。書店で並んでいるのかな?

 

元ホステスの女性が、2022年秋から北京で生活をするという話。彼女の夫は3年前より現地に駐在しており、一番大変だったコロナの時期も経験。2人(とワンちゃん)での生活が始まり、ここ最近の北京の様子がリアルに描かれています。

www.bungei.shueisha.co.jp

 

おもしろかった〜、2回読んじゃった。

 

読了1回目で面白かったと思った理由。

それは描写が、身近すぎるから。作者綿矢さんの特徴なのか、本作で意識したのか、固有名詞がふんだんに出てくる。地名、お店やサービスの名前、人名、あとはローカルグルメの名前などなど...。「ああ、あそこの話だ」「ここ行ってみたい」なんて、地元情報として楽しめました。中国語のルビもふってあって、「へ〜、こんな読み方だったんだ」なんて、改めて中国語読みも学べちゃったり。

主人公が新天地でいろんなことを経験していくので、まるで実在する人のブログを読んでいるような気分にもなったでしょうか。

しかも真冬という季節がドンピシャ。私が読んでいた現実世界の時間と、作中でのタイムラインが重なる部分があって、不思議な感覚に。私は今年1月末に北京に来ているため、(リアルの)夫が苦労した厳しいコロナ政策や、その後方向転換後の感染爆発を知らないですが、ほぼ1年が巡った今、作中では22年の歳末や23年の年明けが描かれていて、なんだか中国の過渡期を追体験しているような気になりました。

 

また、私がぼんやりと見てきた中国の景色を、写真や映像に頼らず文章にするとこうなるのか〜なんても。言語化してくれてありがとう、という感じです。(偉そうかな)

作者は実際に北京で生活をしていたそう。たくさん取材をして、見て聞いて感じて、書き残していたんだろうな。アクティブさに脱帽。すごいです。

 

まもなく1年過ごしてきた私は、なんだか悔しくて、私も主人公や作者みたいにもっとリアルな北京を満喫したくなって。ビジネスマンがお昼に集まる食堂で、油泼面(ヨウポーミエン)を注文してみました。美味しそうと思えなくて、今まで避けていたけど... ハッ、これは新しい世界!

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しばらく口の中がニンニク風味になってしまったけど、病みつきになりそうな一品。他の料理にも挑戦してみたい!

 

 

2回目で感じたこと。

ようやく、小説としての面白み... 味わい?に辿り着きました。

主人公の性格、信条、数ヶ月の北京で体験したことによる決断とマインドチェンジ。なんとなく主人公=作者の目線だと思っていたけど、ここにちゃんと架空の、しっかり息の吹き込まれた1人の女性がいるんだ、と気づきました。北京という舞台だから成り立った、彼女や周り登場人物の気持ち。なるほど、これは人のブログでも紀行文でもなく、小説です。
決して主人公には共感できないし、実在したら好きになれないかもしれない。でも怖いもの知らずのポジティブ思考は羨ましい。駐在男性はどう感じるんだろう。

 

日本にいる私の家族や、北京で知り合った人たちに「ぜひ読んで!追体験できるよ!」と勧めたかったけど... 物語の側面を見れば、人の感じ方それぞれだろうし、反応が怖くてやっぱり紹介できないかなぁ(笑)。

 

 

話は変わるけど、綿矢りささんの芥川賞受賞作『蹴りたい背中』、どういう内容だったか....。当時、私の父が同年受賞の『蛇にピアス』(金原ひとみ作)と一緒に買い与えてくれたけど、読んでみると蛇の方はアダルトな物語で当時の私には刺激が強すぎ、綿矢さんの方を忘れちゃっていました。
同年代、当時最年少受賞だったお二人は今も仲が良いんじゃないかとか、勝手に想像しちゃう、記憶に残る作家さん。

 

これを機に、他の作品もたくさん読んでみたいなぁ。